気になる症例集
粉瘤(ふんりゅう)のこと
繰り返すたびに切開しなはればならないのか
38歳・男性。にきびやおできができやすい体質でしたが、5年くらい前から耳と首にしこりができ、皮膚科で、粉瘤で心配はいらないと言われました。耳たぶはできたものは大きくなリ痛むので切開してもらいました。
その後も同じ場所にできてきます。
医師はできたら切ればいいと言いますが、やはり切開はいやです。
右の首のものは1円玉くらいの大きさです。
なぜ何度も再発するのでしょうか。根治法はありませんか。
再発をなくすには切開して嚢腫ごと取り除く
粉瘤は、日常的によく目にする良性の腫瘍です。皮膚の表面が半球状に盛り上がり、やや弾力のあるしこりとして触れることが多いでしょう。顔や首、背中などはできやすく、直径1cm以下の小さなものから数センチの大きなものまでさまざまです。
病理学的には嚢腫(表皮細胞などによっで袋状の構造を形成しているもの)の一種であり、皮膚の嚢腫をまとめてアテローマあるいは粉瘤という病名で呼んでいます。
表皮が皮膚の中に袋をつくってしまった
一般に皮膚の表面では、一定のサイクルで新しい表皮細胞に入れ替わり、絶えず垢として角質がはがれ落ちています。粉瘤というのは、皮膚の表面から連続した表皮細胞が、皮膚の中は嚢腫を形成してしまった状態です。
外に排出されなかった角質や皮脂などが、嚢腫の内部にたまっていくため、徐々に大きなしこりを形成してしまうわけです。
粉瘤の表面には、内部と連続した出入り口が黒い点として見えることかあります。
この出入り口を通して、外部から雑菌が中に入ってくると、化膿して大きく腫れ上がったり、痛みを伴うようになってしまいます。
イヒ膿して腫れている場合には、抗生物質を使用したり、表面の一部を切開して中にたまっている膿などを出すような処置を行います。
しかしこれらの治療は応急処置を行ったにすぎません。
部分的な切開を行っても、嚢腫の内部にたまっている角質などを排出しただけであるため、再発を繰り返す可能性があるのです。
粉瘤全体の切除が望ましい
今回ご相談の文面から判断すると、細菌感染を起こしてしまった粉瘤を、応急処置としで切開したものと考えられます。中にたまった角質や膿などを排出させると、一時的に腫れや痛みは改善されますが、もともと生じている嚢腫部分は残ってしまいます。
そのため、徐々に嚢腫の内部に角質などがたまって、再発を繰り返しているということなのでしょう。
再発がないように治療するためには、応急処置としての切開ではなく、手術により粉瘤は心配のいらない皮膚病変といえます。
しかし、病理学的に複雑に分類されるように、まれに悪性化か疑われる場合もあります。
ですから、切除した病変は、念のため病理学的な検査を行ったほうがよいと思われます。
日常生活においては、病変部の表面を清潔に保つことはもちろん、規則正しい生活やバランスのよい食事を心がけることも重要であると考えられます。