会津文芸 会津文芸クラブ 第9号 2025
特集「川柳でみる医療」
「第七回会津文芸のつどい」講演より 遠藤剛
よくがんの腫瘍マーカーというのがありますよね。がんのマーカーの採血をしませんかと、二千円ですけれども、いいですかと。いわゆる人間ドックでやったことがあるんですけれども、それは進行がん、かなり進まないと腫瘍マーカーは上がりませんから、ですから上がったときには、もうかなり進行している。極端に言えば末期状態のこともあるわけです。一つだけ皆さんに、ここで覚えておいてほしいのは、早期がんで分かるのは、男性の前立腺がんです。PSAという値が四以上なら泌尿器科に行って診てもらって、早期にみつかるがんです。他のは、かなり進まないと上がりません、腫瘍マーカーは。ですから、唯一早期で分かるがんのマーカーは、PSAという前立腺がんだと。それはもちろん女性には前立腺はありませんから、男性の方は、やっぱ五十歳を過ぎたら二年に一回ぐらいは調べておいたほうがいいかなと思います。
■還暦が米寿を介護する日本
少子高齢化、もう典型的なあれですよね。喜寿は卒寿を見る。
■健康の深追いをして不健康
ネット社会で、自分はこうじゃないか、悪いんじゃないかと。大体みんな悪いものじゃないかと言います。でも、大体九割は悪いものじゃないことのほうが多いです。
皆さん、がん、がんと言っていますけれども、そんなに多くありませんから、がんは。ただ最低条件をやっていればいいですよ。今の時代、少なくとも胃カメラ、大腸、あとはCTも二、三年に一回とか、やってもいいかなとは思っています。
あとはPETですね。PETをやれば何でも分かる。俺、十五万かけたから全部分ると、全然分かりませんよ。進行胃がんぐらいしか分かりません。管腔臓器、中に空気が入ったり、そういったところはPETは弱い。ぎゅっと詰まっている臓器、肝臓、胆嚢、脾臓、腎臓、前立腺、膵臓、そういうところはPETは強いです。
ですから、PETでよかったらほかの検査は要らないんじゃないですかと言ってくる患者さんがいます。でも、ほかの検査をやっているということは、PETじゃ分からないこともあるという事です。胃がん、大腸がんはよほど大きくならない限り分かりませんということだけ、皆さん一応覚えておいてください。大事です。胃は少なくとも有効期限は一年です。もう六十過ぎれば一年前に胃がんはなかったのに、一年後に早期がんが見つかりましたよと。これも毎年数例ですが経験します。
だから、健診というのはなぜ毎年やるのかということを考えれば分かるわけです。一年で人間は変化するんだな、一年でまた別の病気になることがあるんだなと、だから健診は毎年やる。これは我々の先輩が苦労して研究した結果だと僕は思っています。
これです。これは僕、ちょうど今年で川柳やって三十年になります。竹田病院に来て三年ぐらいたって、ああ、やっと地元に帰ってきたな、やっと落ち着いたなと思った頃に、何かやろうかなと思ったときに、うちのおやじが川柳とかを書くのが好きで、僕の兄貴も川柳をやるんですけれども、僕と兄貴に川柳をやれとか、何かに投稿しろとか一切言わなかった、おやじは。おやじも外科の医者だったんですけれども、ただ朝起きるとはがきが置いてあるんですよ。そのときに川柳とか、投稿文が書いてあった。俺と兄貴はそれをボーっと見ながら、へえ、なるほど面白そうだなと思って、一番最初に兄貴がやり始めて、次に僕の順です。
■聴診器心の音も聞いている
そのときに、生まれて初めて作ったのがこれです。僕もいつもじゃありませんけれども、普通は心臓の音、心臓の雑音、不整脈とかを聴くためにやるんですけれども、先ほど言ったデータでは現れないところも、例えば嫁姑の関係とか、会社の上司とのストレスとか。やっぱりそれは聞いてあげる。だから、聞いているの「聞く」は聴診器の「聴」じゃない。普通の「聞」です。これは、僕は、これ以上の句はまだ三十年たって超えられません。これが唯一、朝日新聞に投句をして、全国版に載った句です。
おやじは一切子どもを褒めることもけなすことも怒ることもしませんでした。ただしこの一個だけ褒めてくれました。朝日新聞の約七百倍の競争率のところによく載ったなと言って、普通では恐らく全然載りませんよ。いずれにしても、こういうことも大事だなと思っています。僕が死んだらお墓に彫ってと家内に言ったら、即却下でした。アチャー!でしたね。
■命には予備も付録もありません
だから死にますよね。
■地球より重い命を預けます
ルフィー、闇バイトというのは悲しいですよね。僕はあれを見るともう涙が出てくるというか、情けないというか、もう僕はもう聞きたくない、ああいうものは。もう本当にこんな時代になるとは、もう夢にも思わなかった、考えられない。しかも高校生ですよ。高校生が人の首を絞めたり、お金のために。信じられないですよね。こういうことがあるんだと。
だんだん最後になってきました。
■人生は布オムツから紙オムツ
紙オムツから布オムツじゃないですね。我々はみんな縄文時代は葉のオムツだったかもしれません。同じことをみんな人間は先人から学ぶわけです。人間は失敗も同じように繰り返します。 医者もちゃんと誤診もしますよ。でも、それをちゃんと反省して、次の人につないでいくというのが大切だと思っています。我々おじいちゃん、おばあちゃん、ひいおじいちゃん、またその先祖から受け継いだものを、下につないできて自分は死ぬ。それが一番大事かなと。生きている意味っていうのはそれかなと思っています。
いいことだけじゃなくて、いわゆる他山の石とか、人のふり見て我がふり直せ。自分の親を見て、我が身を直す。それぞれやっぱり子どもに、俺、失敗したから、多分子供も同じ事を繰り返す。皆さんもお孫さんたちに言っていると思いますけれども、やっぱり人は綿々とつないできているわけです、DNAはすばらしい。だから僕は毎日新聞の川柳には投句したことがあります。
■この国に生まれただけでもうけもん
僕は親に感謝していますよ。昭和三十四年ですから、とてもいい時代に産んでもらいました。昭和二十年代の人は、まだ戦争の名残りがありましたけれども、三十年代ぐらいはちょっと裕福になって、四十年代以降はもっと裕福だったと思います。オーバーな言い方かもしれませんが、昭和三十年代が僕は日本で一番幸せだったんじゃないかなと思っています。事故もありましたけれども、一番、いわゆ戦争のことを右耳で聞きながら、左耳で若い人のいろん言語とか、そういうのも聞きながら、ちょうどその中間に位置するのが、昭和三十年代に生まれた人間かなと思っています。それはあくまでも持論ですよ。
最後になりました。
■鉛筆とはがきがあればできる趣味
そういう意味では、本当にいい趣味をもらったなと思って。でもちょっと値上がったんですね。大体投稿は減ると予想しましたが、そんなに減らないと思いますよ。三十五円で投句が減るということはないと思います。実際、先生に聞いてみると、あまり減らないと言っていました。川柳は、実際はやっぱり好きな人は投句をしますよ。やっぱり好きな人は、「好きこそものの上手なれ」。やっぱり川柳は本当に安いですよ、本当に。あと頭の体操にもなるし、認知療法、別に俳句でも短歌でもいいと思いますよ、何でもいいですから。まさにここにいる人は書く事や読む事の天才集団ですから、多分全員百歳以上生きると思います。
最後になりましたが、今日のお話が少しでも皆様のお役に立ち、気分転換になればと思います。ご静聴、誠にありがとうございました。(拍手)


