会津文芸 会津文芸クラブ 第9号 2025
特集「川柳でみる医療」
「第七回会津文芸のつどい」講演より 遠藤剛
昔は、五七五七七は短歌ですね。短歌の形で鑑賞もされていたそれまでの付句を、七七の前句から切り離して独立させたもの、それを川柳といいます。■盗人を捕らえてみれば我が子なり
■切りたくもあり切りたくもなし
という歌です。その最初の五七五だけが単独になったもの川柳です。
なぜかというと、柄井八右衛門(からいやうえもん)という、その人の雅号を「川柳」と言ったので、そのまま今、二百五十年以上たったんですけれども、それがずっと残っているわけです。これは、柄井川柳さんの生い立ちから書いたものです。皆さんのお手元を読んでいただくと分ると思います。
江戸時代中期以降に、町人や下級武士によって作られた、詠みびと知らずのれっきとした川柳です。つまり遠藤剛とレッツゴーとか、そういう名前とか雅号なんていうのは全くないんです。要は誰が書いたか分かりませんよ。それがいわゆる平等といえば平等ですよ。皆さんもバイアスをかけているんですね、選ぶときには。ですから、我々が川柳を読むときは名前なしで、字がうまい人、下手な人、あとくせ字、これで全部分かってしまいますので、みんなプリントアウトして同じ字でやって選ぶことを、まず川柳会はみんなそうだと思うんですけれども、多分やっていると思います。
僕は忙しいんで、どこの川柳会にも入っていません。もう勝手に投句して勝手に進めていくみたいな、そんな感じでいます。
■役人の子はにぎにぎをよく覚え
これは江戸時代も今の官僚の裏金も同じだなと、人間変わりませんよと、二百五十年たっても三百年たっても、多分縄文時代から変わっていないんじゃないかなと、人間ね。
■かみなりを真似て腹がけやっとさせ
これは母の気持ちですね。
■居候三杯目にはそっと出し
これは有名な句です。今年は米不足ですので、一杯目からそっと出さなければいけない。
■寝ていても団扇のうごく親心
これはよく聞きますね。うちのお袋もこうやっていたのかなと。皆さんも、お父様、お母様、おじいちゃん、おばあちゃん、みんなそういうふうにして多分、今だったら扇風機とかありますけれども、昔はうちわでした。
僕は、古川柳(こせんりゅう)で一番好きだったのはこれです。
■本降りになって出ていく雨宿り
これは、僕は解説はしません。僕は最初、何言っているのか全然分かりませんでした。もういろいろ考えて、正解というか、分かったときにすごく感動したんです。
ですか皆さん、これは一つ宿題です。皆さんがどういうふうにこれを読むか。次回の会で発表していただきたいと思います。
じゃあ、同じ五七五でも、俳句とはどこが違うのか。
(1)俳句は自然を詠む、お花を詠む、花鳥風月ですね。川柳は、基本的に人間を詠む。
(2)俳句は文語体、川柳は口語体。
(3)俳句とは季語が絶対条件ですが、今は無季語というのもありますけれども、川柳には基本的に季節、季語はありません。
(4)俳句は、最後に「......や」「......けり」とありますけれども、川柳では一般的にはあまり使いません。
今度は川柳の三要素です。
(1)穿ち
(2)滑稽
(3)ユーモア
これがいわゆる人間を詠む川柳の三要素です。
■ズバリ斬るホロリ泣かせるチクリ刺すニンマリ笑うポンと膝打つ
これらは川柳の全てを表しているような文章だと思います。
ただし、いろいろ人をおちょくったりするのもいいんですけれども、人の命をおちょくったり、人を軽んじたり、興味本位で相手のあだなを詠んだり、ばかにしたり、そういうことは川柳ではありません。昔、狂う句と書いて狂句(きょうく)という時代があったんですけれども、そういうことをやった時代もあったらしいです。でも、それをちゃんと戻しましょうと言って、一般の川柳に戻した偉い大先輩がいます。
■救急車自分で呼べよバカヤロー
■ケースの死笑いとばして後始末
■金がないそれがどうしたここ来んな
■休み明け死んだと聞いてほくそ笑む
もうどうしようもないですね。でも、こういう川柳を作る人はやっぱりいるわけですよね。こういうのは川柳ではありません。
川柳はダジャレではありません。
■いい家内十年たてばおっ家内
ダジャレの川柳です。
■恋女房今じゃ化粧の濃い女房
■この鮎は養殖ですか和食です
■適切な名前に変えりゃフリントン
この句は、今日一番受けていますよね。でもこれは駄目ですよ。ダジャレは使っては駄目ですよ。ピタッとはまるダジャレは百句に一句ぐらいあればいいと思いますけれども、基本的にはあまりよくない、これは。
刺す笑いは、機知、寸鉄人を刺す諷刺であり頭の笑いです。ユーモアは、胸、ハートの笑い。 あと「穿(うが)ち」が最大に発揮されるのが時事川柳。
一般川柳は、先ほど言った人間を読む川柳、時事川柳は、今の石破首相とか、岸田首相とか、吉田茂さんとか、そういう昔の人とか、いわゆる権力に対する庶民の文句・批判みたいなことを川柳にしようと、それが時事川柳です。


