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雑誌インタビュー・執筆情報
薬の知識 Jun.'00 Vol.51 No,6

便秘外来を実施

日本では古来より快食快便が健康の尺度あるいは健康の源とされてきた。
さらに現在では、便秘から癌が発見される場合もあり、便秘を軽視してはならない。
この便秘治療を専門外来にしたのが、会津若松市のえんどうクリニックである。

外科・胃腸科・肛門科・内科を標榜するえんどうクリニックはJR会津若松駅から徒歩10分のところにある。
同院に向かう途中、頻繁に医療機関やその案内の看板が目に留まる。

病床充足率が140%を超える会津若松市ならではの光景である。
かの地にあって、同院は10床の有床クリニックとして、1日平均外来患者数120人、外来手術およびデイサージェリーも含めた痔の年間手術件数は300例を数える。

便秘外来を実施

「雪は天からの手紙であると、作家の中谷宇吉郎さんが言いましたが、ぼくは便を体内からの手紙であると思っています。
便を見ただけで、腸のことがある程度わかりますからね」。

同院院長の遠藤剛氏ぱ便秘外来の必要性をこう強調した。
遠藤氏の専門は消化器外科であるが、1994年11月に開業する際「便秘外来を開いてみたら」という恩師に勧められて半信半疑で開始した便秘外来である。

いざ 始めてみたら、便秘を持つ人は予想以上に多く成果は大きかった。
「便秘の患者さんのなかには、市販の薬を何年にもわたり多量にのんでいたり、自分の指を入れて出すという誤った対処法をしている方もいて指導の必要性を痛感しています。

また、当院は痔の治療で来院される患者さんが多いのですが、それらの患者さんの半数以上は便秘で悩まされています。
便通を整えるだけで痔が治る場合もあるのです」。

便秘外来は予約制で、通常の診療時間終了後に診察室ではなく、カンファレンスルームで実施される。

1人当たり30分〜1時間かけて、十分に話し合う。
緊張のためか、通常の診療時間に便秘に関する症状を訴えない患者でも、1対1で遠藤氏と向き合えば、口が軽くなる。
「これは便秘に関することに限ったことではなく、要はリラックスしたムードを作ってあげることが大切だと思っています」。
医師との面談が終了すると、院内栄養士による食事指導へと引き継がれる。

同院独自の指導用パンフレットが作成されており、それを基に個々の患者の生活に合わせた食事指導が実施されている。

便秘の原因はさまざま

便秘の種類には大きく分けて機能的便秘と器質的便秘の2つがある。
機能的便秘はいわゆる常習性便秘で、過敏性腸症候群や薬剤性の便秘も含まれる。

桔に薬剤性の便秘には留意する必要がある。
代表的な薬剤は、抗コリン剤、コデイン、ベーク刺激薬やカルシウム桔抗薬などであるが、忘れてはならないのが精神科で使用される向精神薬である。

患者は精神科に受診していることを隠している場合もあり、便秘外来で医師と1対1になって初めて口を開いたケースもある。
服用している薬剤が便秘の原因とわかれば、他の疾患か、便秘か、どちらの治療を優先するか、その科の医師と話し合い、患者に対してはインフォームドコンセントを行うことになる。

器質的な便秘は、大腸の疾患や切れ痔・いぼ痔などが多い。
特に切れ痔の患者は、排便時の痛みのため、排便を抑制してしまいがちで、便をしない習慣が形成されてしまう。

糖尿病や甲状腺機能低下症などの全身性の疾患が原因になることもあり、まれにパーキンソン病や脳腫瘍でも便秘は引き起こされる。
器質的な便秘の場合は、原因疾患の治療にかかる。

「こうした外来を行うと、まさにストレス社会と申しますか、会社での上司とのトラブルや職場の人間関係、果ては姑との行き違いの話まで出ます。
精神的な(心因的な)便秘の場合は、話を聞いてあげただけで治ってしまうことさえあるのです」。

ただし、便秘治療で絶対に見逃してはならないのは癌である。
同院では、風邪で来院した患者が便秘外来の掲示を見て便秘を訴え、痛が発見されたケースを経験している。

「便秘と下痢を繰り返す、あるいは粘血便が出ていたら、要注意です。
自分勝手にと判断する方も多く、癌と合併しているケースもあり、大腸内視鏡検査を勧めています」。

乳幼児の便秘はまず母親の指導

便秘外来の対象になるのは成人だけでなく、小児も含まれている。
肛門疾患で同院に来院する患者の5〜6% を乳幼児が占めている。受診理由は、まれに直腸脱が見受けられるが、ほとんどが乳児痔瘻や裂肛である。

特に 裂肛の原因となるのが便秘である。
小児の便秘の特徴として、遠藤氏が行ったアンケート調査によると、母親自身も便秘であるケースが多い。

便秘を特つ母親は、自分自身の便秘に慣れてしまい、軽視しがちであり、子どもの便秘についても、あまり関心を特たない場合が多い。
自分と同様、手軽な市販薬を服用して、その場しのぎ的に対処したりしてしまう。

「子どもが便秘になったから、ただ下剤をのませればよいといったことでは、将来便秘薬が効かなくなり悲惨な状況を招くこともあります。
最初に食事療法を行い、それでもだめな場合だけ薬剤を少量から併用する。
そういうことをお母さんにきちんと理解してもらうことが重要になります。

特に乳幼児の場合、便秘への対処方法が年齢によって異なりますから、子どもの年齢に合わせたきめ細やかな食事指導が必要なのです」。

積極的に情報を提供

同クリニックの待合室の壁には、便秘に関する情報に限らず、さまざまな疾患に関する情報が掲示されている。
それは、遠藤氏の情報公開に関する考え方の現れである。

「情報公開の必要性が盛んにいわれていますが、待合室の掲示板も情報公開の場のひとつだと思っています。
これからの時代は、医師だけでなく、患者さんにも勉強してもらわなければなりません。
医師にお任せの時代は終わりました。
まずはこれらの情報を見て、私に質問してもらいたいと思っています」。

便秘外来以外にも、同クリニックではユニークな試みがなされている。
開業以来、隔週木曜日の午後7時から カンファレンスルームで行われている"健康相談"もそのひとつである。

そこでは、外来診療中または回診中に遠藤氏に聞きたかったけれども聞けなかったことなど、患者が日ごろ思っている疑問に対する質疑応答をする。

2000年1月からはまごころ医院新聞を創刊させ、健康や薬に関する一般的な情報あるいはQ&Aを掲載している。