雑誌インタビュー・執筆情報
CLINIC magazine 2004.3月号
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1.はじめに
過敏性腸症候群(IrritableBowelSyndrome:IBS)は機能性消化管障害(FunctionalGastrointestinalDisorders:FGID;Rome?)のなかの1疾患であり、消化器疾患のなかでも頻度の高い疾患である。IBSは、便秘や下痢などの便通異常および腹部症状(腹痛、腹部膨満感、腹鳴など)の緩解・再発を慢性的に繰り返すが、これらの症状を説明するのに十分な器質的病変が腸管の内外に認められず、その症状は大腸を中心とした下部消化管の機能異常に基づいていると考えられている。
また、その症状の発現や増悪にはストレスが深く関与しているともいわれている。
IBSの原因は不明な点が多いが、腸管の運動異常、知覚過敏などの素因に、過労、睡眠不足、不規則な食生活、運動不足など不適切な生活習慣、タバコ、アルコールなどの嗜好品、薬物などの身体的ストレスや家族、仕事、学校における問題などの精神的ストレスが加わり発症すると考えられている。
IBSは古くから知られているが、ストレスの増加や食生活の変化などにより近年患者数が増えている。
2.疫学
欧米では一般人口の14%にIBSの症状が認められ、そのうち約20%が診療を受けているといわれている。また、一般住民を対象とした調査ではAgreusらは12.5%、Tallyらは17%、Drossmanらは17.1%、Jonesらは21.6%と報告している。
2002年に日本においてRome?の質問紙を用いて実施した調査では、一般内科を受診する患者の31.0%がIBSであると報告されている。
IBS患者は軽症が70%を占め、その多くがプライマリーケア医を受診するといわれており、当院においても、日常診療のなかでIBS患者にしばしば遭遇し、近年その頻度が増加していると実感している。
実際に当院を受診した外来患者におけるIBSの実態調査を実施したところ、外来で消化器症状を訴える患者の約15%がIBSと診断された。
3.診断
前述の通り、IBSは便秘や下痢などの便通異常および腹部症状(腹痛、腹部膨満感、腹鳴など)の緩解・再発を慢性的に繰り返すが、これらの症状を説明するのに十分な器質的病変が腸管の内外に認められない症候群である。したがって、IBSの診断には十分な問診と基本的な検査によって器質的な異常所見がないことを確認することが重要となる。
IBSの診断基準としては、これまでにManningの診断基準、NIH診断基準などさまざまな基準が提唱されてきたが、近年では国際的な統一基準としてRome?診断基準が広く普及している(図1)。
また、日本で独自に策定されたものとしては、B.M.W.クラブ診断基準がある(図2)。
当院では腹痛などの腹部症状や便通異索などの消化器症状を訴える患者に対して、問診にてチェックシートとアンケートを活用して診断を行っている(図3、図4)。
いずれも非常に簡易であり、日常多忙な診療のなかでも簡単に活用できるメリットがある。
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4.IBSの治療
IBSの治療において最も大切なのは医師と患者の信頼関係を構築することである。まず、IBSの病態を患者に十分に説明すること、そして以前は「神経質」「原因不明」などとして片付けられてきたが、適正に治療することが必要な疾患であり、その治療が可能であることを患者に伝えることが大切である。
次に生活指導・食事療法が挙げられる。
規則正しく偏りのない食生活、十分な睡眠、適度な運動、排便習慣をつけることの重要性を患者に理解してもらうことである。
食事は、下痢型では脂肪・繊維などの摂取は腸管の運動を促進させるので避けるよう指導し、逆に便秘型では繊維の摂取を勧める。
また、ストレスは症状を悪化させる大きな要因であり、時間的にゆとりを持ち、リラックスできる環境をできるだけ作ることが重要である。
薬物療法としてはポリカルボフィルカルシウム(ポリフル)が有用である。
高分子重合体で、便中の水分を整えることで便性状を改善するというユニークな薬剤である。
下痢状態と便秘状態の両方に効果を示すため、2002年5月に厚生労働省精神・神経疾患研究班によって作成されたIBS治療ガイドラインにおいても、基礎薬として推奨されている。
また、血中に吸収されないので安全性も高く、高齢者にも安心して投与できるという利点もある。
PCをベースとして下痢、便秘、腹痛などの症状にあわせて下剤や整腸剤などを併用する。
以下に処方例を示す。
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5.おわりに
IBSは消化器疾患のなかでも頻度が高く、今後ますます増加することが予想されている。当院では外来において簡単なアンケートを実施しているが、下痢や便秘で悩んでいる患者は意外に多く、プライマリ・ケア医においてもIBS患者は多くみられることを確認している。
また、下痢・便秘患者は市販薬で自己治療していることも多く、誤った治療は後の重症化を招き、治療が困難になりかねない。
日常診療において積極的に診断を行い、早期に対応することが患者のQOLの改善にもつながる




