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MEDICAL NOW 2004 No.163
病院と患者さんをつなぐ"まごころ"の広報誌
病院と患者さんをつなぐ"まごころ"の広報誌
病床数1,000床クラスの大病院が2ヵ所あり、開業医も90軒を超える"医療激戦区"の会津若松市。その街の一角に、来院患者数が1日平均120〜130人と、地元の人々から高い支持を得ている「えんどうクリニック」がある。
開院10年目となる同院の最大の特徴は、医師・看護師・事務・厨房が"四位一体"となって、"納得のいく診療"と"わかりやすい医療"を実現すべく、病気や病院についての情報提供に力を入れていることだ。
院内の待合室には大型の液晶画面"メディウインドウ"が掛けられ、たえず医療情報が流れるようになっているし、壁にもさまざまなお知らせや記事が張られている。
そんな中でここ数年、特に同院が力を入れているのが、2001年から発行し始めた広報誌「まごころ医院新聞』の制作だ。
「本来、医療でもっとも大切なのは"まごころ"。患者さんの話をじっくり聞くのはもちろん、検査した場合はその理由や結果をきちんと説明し、今後どうすればいいのかまでアドバイスする。それが医師の役目であり、あるべき医療の姿のはず」と遠藤剛院長。
そのために、同院は隔週で「健康相談会」を開き、ふだんの外来診療では話しにくいことや個人的な悩み、家族の病気などについての相談を受け付けている。
だが、毎日100人以上の患者を院長1人で診ている以上、すべての患者に十分な時間を割くのは難しい。
そこで、手が回らない部分をワォローしようと作り始めたのが、"まごころと情報"を提供する広報誌だ。
誌面には、病気や検査についての詳しい解説のほか、医療費や保険に関する話題も盛り込まれており、A4版で全8ページとコンパクトな構成ながら、実に読みごたえのある内容になっている。
また、表紙や裏表紙に印刷されたスタッフの紹介記事からは、同院のアットホームな雰囲気が伝わってくると好評だ。
遠藤院長は「誌面にスタッフの顔が載っていて、その隣に"何でも質問してください"と書いてあれば、患者さんは診察前にスタッフや病院の雰囲気をつかめるし、診察のときにも質問しやすくなるから」と狙いを語るが、その意味では、広報誌は単なる情報提供にとどまらず、クリニックと地域住民をつなぐ役目をも果たしているといえるだろう。
いっぽう、院内に目を向ければ、広報誌は職員教育のツールとしても役立っている。
広報誌を作ることで、スタッフ1人1人が、今までなんとなくこなしていた日々の仕事について改めて勉強し直したり、他部門の仕事内容を知って、職員間に連携や思いやりが生まれたりなど、"四位一体"の診療態勢を推進する効果があったからだ。
現在『まごころ医院新聞』は年1回のペースで、第3号まで発行されている。
最初の2号は遠藤院長主導で作られていたが、3号は外部から広報専任スタッフを迎え、より親しみやすい誌面を目指して、内容・デザインともにリニューアルした。
今後は、病院から患者への情報提供ツールとしてだけでなく、患者と病院とのコミュニケーションツールとしても活用できるよう、切り取って診察時に提出できる質問カードや、休診日が一目で分かるカレンダーを付け、発行ペースも3〜4ヵ月に一度を目指すなど、さらなる刷新をはかっていきたいという。
広報誌を通じて患者の生の声を聞き、より人間味あふれる医療を提供する。
それこそが、"安心とまごころの医療"をモットーとするえんどうクリニックの目指すところなのだ。
(高橋)