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雑誌インタビュー・執筆情報
医療経営 1999 4 No.111

介護保険時代にも、お家芸の外科・肛門科で勝負


東北・福島は会津若松市。
同市を中心とした会津医療圏は、病床充足率が140%以上で県内全医療圏中最も高く、人口当たりの診療所軒数でも他のほとんどの医療圏とは異なり、ここ数年増加し続けるなど、医療提供体制は過剰状態にある。市内には全国でも屈指の大型病院、財団法人竹田綜合病院(1209床)のほか会津中央病院(1001床)がある。

開業医の次男としてこの地で生まれた遠藤剛氏は、1983年に帝京大学医学部を卒業後、同大学第二外科に入局。
関連病院を経て、肛門科の権威である隅越幸男氏に師事すべく東京・新大久保にある社会保険中央総合病院大腸肛門病センターに勤務する。

全国に点在する隅越門下生の一人として地元に戻り、竹田綜合病院外科に六年間勤務したのち、94年11月、36歳で外科・肛門科中心のクリニック(10床)を開業した。
肛門科を専門に選んだのは開業医であった父親の影響であり、五歳のころから手術室で"見学"させられたという。
実家の医院は皮膚科医の長男が継ぎ、剛氏の開業はゼロからのスタートだった。

肛門科PRは、電話帳広告が効果的

肛門科PRは電話帳広告が効果的 ―開業後のPRはどのようにしましたか。

地元地方紙に積極的に投稿したり、取材を受けたりしました。
これまでさまざまに紹介されたものをファイルしたものが、いまでは八冊になっていて、入院患者用の談話コーナーに置いて見てもらっています。

とにかく、どんなかたちでも自分をアピールし、また情報を提供していかなければ、私が何をやっている医者か伝わっていかないと思います。
特に肛門科というのは、ロコミが一番ですから。

一方、田舎の医者というのは他に専門があっても、内科も診て地域医療に貢献するのが使命です。
専門の外科・肛門科に加え、竹田綜合病院で勉強した内科・胃腸科を標榜しました。
そのうえで、患者さんの症状に含せて病院や各専門医に連携していく、そういう見極めも大事な役割だと考えています。

そうすると、患者紹介も多いのでないですか。

開業当特、他科の医師を紹介して「ああ、患者さんがー人滅った」と思っていたとき、「いい医師を紹介すると患者は戻ってくるもの」という言葉をある人から聞いて、感動したことがあります。
それ以来ですね、積極的な気特ちで紹介するようになったのは。

いまでは年間700件くらいになりますし、紹介後は、症状の判断など見立てが正しかったのかどうか、紹介先の先生と必ず連絡を取り合っています。

1診療科ごとの患者割合はどうなっていますか。

一日当たりの外来患者数は 100人から120人くらいで、肛門科四割、外科三割、内科・胃腸科で三割です。
痔の手術件数は年間約300例になります。

会津医療圏で 肛門科を標榜している開業医は二軒、病院も二軒くらいしがありません。
肛門科のPRで思いのほか効果的なのは電話帳広告です。

いまはやめましたが、茨城・栃木の電話帳のも広告を出していたことがあります。

他県の電話帳広告ですか?

肛門科の場合、電話帳広告にはかなり費用をかけてもいいと思います。
肛門科の患者の一割は他県からの人たちです。

実は、問診表の最後に当院を知ったきっかけを聞く問いがありますが、1000人分を集計したところ、ロコミが六割で、これに次いで電話帳というのが二、三割もありました。

肛門科や痔の啓発情報をさまざまに発信することは、患者の受診行動にも影響を与えそうですね。

肛門科受診が恥ずかしいというのは日本人に特徴的で、たとえば欧米先進国にはない感覚です。

患者さんに「痔は腰痛と並んで二本足歩行をする人間にしかない病気」と話をすると、なんとなく安心したりしますね。

肛門科の負のイメージを正のイメージに変えるためにもさまざまな機会にアピールしていきたいと思っています。

デイサージャリーの比率を高める

改めて遠藤先生の医療哲学をお聞かせください。

「至誠、患者に通ず」の信念をもって、患者とのコミュニケーションを大事に、わかりやすい言葉で説明するよう心掛けることです。
私の趣味の川柳で表わすならば「聴診器 心の音も 聞いてやり」といったところです。

大事なのは患者さんが私の話に納得することであり、 話の最後には必ず「何か質問はありますか」と尋ね、具体的な患者自身の言葉を聞き返し、確かめるようにしています。

知識が豊富そうな人や、そうでない人、高齢者や若い人、耳の遠い人もいますから、それぞれの立場にあった接し方が必要です。

これは、どの患者数で、それがきますか。

たしかに患者数の増加に従ってサービスの低下は否めません。
しかし、患者個々がいったい何を一番求めてきているのかを見極めることが重要だと思っています。

私の話・意見を聴きたいのか、点滴をとにかく打ってほしいのか、まずは検査だけでいいのかなど、患者の欲していることを私なりに判断します。
もちろん100パーセント正しい判断が できるとは限りませんが、出来るだけ多くの情報を私は提供します。

ですから、初診には時間をかなり割きます。
そのうえで、個々の患者の希望に合わせていく。
こうすれば、たとえ100人を相手にしても質の高い医療が提供できると思います。

介護保険時代になって、在宅医療の必要性がさらに強くいわれていますが。

基本的には、今後の医療は介護保険を無視しては考えられないでしょう。
たとえ、いまのように外科・胃腸科・肛門科が中心でも、医療のバックボーンには内科があり、内科疾患の患者さんが高齢化して寝たきりになることもあるからです。

いまは竹田綜合病院の紹介患者を六人、同病院看護婦とタイアップして在宅で看ています。
しかし、クリニックには入院患者さんもいる、手術もあるので積極的に外に出ようとは思っていません.。

在宅医療への依頼が強くなったら?

対応能力の限界かきたら、連携先に紹介することになるでしょう。
質の高い医療を提供する、また、地域医療に貢献するという意味でも必要なのは、なにもかにも取り組むのではなく、自分のポリシーを打ち出すことです。
私の場合のそれは外科・肛門科です。

さらに専門特化していくということですね。

そうです。
今後は、デイサージェリーも積極的に採り入れることにしています。

実は、痔の手術待ちが三ヵ月なのです。
いまはデイサージャリーの割合は一割程度ですが、これを二、三割まで増やしていって、少しでも早く手術をしてあげたいのと、費用面の負担軽減、特間の節約にもなります。

技術的には全く問題はなく、症状が軽度から中程度の場合ならば十分に可能です。
専門特化 ということでは、いずれ診療科目の内科・胃腸科を削って基本的には「遠藤外科・肛門科」として、最終的にはやはり私のお家芸でやっていこうと考えています。

10年後をめざして実践するつもりですが、そのためにも肛門科のクリニックを患者さんが気軽に受診できるように、私たちが積極的に啓発活動をしていくことが必要です。