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大塚薬報3号


第二回 健康情報過多

健康の深追いをして不健康

一昨年、「敬老の日」に合わせて総務省が発表した統計調査結果によると、わが国の65歳以上の高齢者人口は2744万人で、総人口に占める高齢者の割合(高齢化率)は21.5%に達し、5人に1人以上が高齢者という計算になる。
これは世界一の数値である。

今日、私たちが情報を得る一般的手段といえば、ほとんどが紙媒体、電波媒体、インターネットであろう。
そして、そういうものから惰報を入手した人たちによるクチコミだ。
近年、この情報景がインターネットを中心にして格段に拡大したために、世の中は「情報社会」と呼ばれるようになった。
しかし、その情報量たるや膨大なものであり、もはや、出所、内容、正否など玉石混交、入り乱れて「氾濫」の域にあるといってよい。
こうなると、事と次第によっては情報の真偽を判断するために、そのまた周辺の情報を得る必要に迫られることになって、さらにその量は膨らむことになる。

その結果、私たちは得体の知れぬ情報に支配されるというような、つまりは、しっかりと自分の中で咀嚼、整理されずして筋道がつかめないままに行動させられてしまうことになる場合がある。
いろいろな局面で思い当たる節がある人は多いだろう。
とりわけ、社会的背景や医療を取り巻く問題が山積している今日、人びとの「健康」に対する意識の高まりは並々ならぬものがあって、それに比例して、いわゆる「健康情報」の量の多さは群を抜いて多い気がする。

しかし、ほとんどの人が健康で長生きしたいという普遍的テーマを持って生きている以上、発信される情報も飛び交う情報も多くなるのは当たり前のことではある。
新聞、雑誌、テレビ、インターネットなどなど、いまや「健康情報」は花盛りである。
そしてこの「健康情報」はこれらを見聞きした人から人へ、組み合わさったり欠落したりしながら伝言ゲームさながらに伝播していく。
おまけにそのスピードと変化が激しく、一体何が正しくて何が間違っているのかもじっくり検証している間もない。

それにもかかわらず、そこから得た"耳学問"を手がかりに健康食品、サプリメント、「☆$@健康法」、代替医療、健康器具などなど……、健康にいいとなれば人びとは手当たり次第に飛びついてみることをするから、いまや「耳学健康評論家」とでも呼べる人たちに支えられた「健康産業」は急成長を遂げている。
たとえば、健康食品市場規模は健康志向食品と機能性志向食品を合わせると一兆八千七百億円(富士経済調べ)を超え、二兆円に迫ろうかという勢いである。

商品の入手経路はドラッグストア、スーパー、ホームセンター、通信販売、訪問販売、インターネットなどさまざまである。
なかにはこれらにおさまらない業種やアングラな方法で売られることもある。
これを下支えしているのが過多ともいえる「健康情報」なのである。
その情報によれば、人間の健康に関してはすべてバラ色に見えてくる。
だが、それによって決して普遍化の道をたどらないような「自己流健康法」が生み出されていることも確かだ。
悪くなければ目くじらを立てることでもなかろうが、それによって肝心な治療を遅らせたり、正しい健康への道を誤ったりするようなことにでもなったら問題だ。

実際にそういうことがないわけではない。
これこそまさに、

『健康の深追いをして不健康』

ある家庭のご主人に聞いた話。
食器棚などにいろいろな高額の健康食品、サプリメントの入ったきれいな瓶や箱が並んでいるが、ほとんどが食べ残し、飲み残しの消費期限切れだったりするそうだ。
それに物置か寝室の隅にビニールシートをかぶった健康器具の類もある。

たいていは本人も含めて家族の健康を心配する奥さんが購入したものだという。
ときどき何の前触れもなく消えていることもあるという。
そしてこれらが夫婦喧嘩の原因になることも少なからずということで、どうも健康の深追いは家庭内の健康にもよろしくないことがあるようで…。