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雑誌インタビュー・執筆情報
茶の間 2006初秋号

つらい便秘にならないために毎日しっかり食物繊維を摂りましょう。

健康の基本は「快食快便」です。
しかし今、白然なサイクルでお通じがなく、慢性的な便秘の症状に悩まされている人が急激に増えているというのです。
また、毎日の健康維持のためだけでなく、大腸ガンなどの重大な病気から体を守るためにも、便秘の解消が欠かせないことがわかってきました。
そんな中、いち早く便秘外来の必要性に気づき、福島県会津若松市で多くの患者さんの支持を得ているえんどうクリニックの遠藤剛先生に、おなかの健康が大切なことを教えていただきました。

便秘はまず、自分で「出す」努力をすることがとても大切なのです。

便は体中の調子を教えてくれる重要なサインです。

自分が健康かどうかを判断するのに欠かせないもの、それは「便」です。
私はつねづね「便は体からの大切な手紙」だと感じています。
なぜなら、その日出た便を見ただけで、ある程度その人の腸の様子がわかるからです。
しかし、最近、体の大事なバロメーターである便が本来のリズムで出ない、いわゆる「便秘」で苦しんでいる方が大変増えているのです。

当院は便秘外来を設けて十年以上になりますが、開設当時から沢山の方が来られ、思った以上に便秘に悩んでいる人がいることを知りました。
しかもその多くが、すでに他の病院で診療を受けたことがある人ばかり。

そこでの処方といえば、もっぱら便秘薬をもらうことだったというのです。
確かに薬も上手に利用すれば、便秘解消に役立ちます。
しかし薬ばかりに頼っていると、次第に腸管が麻痺して自分で出そうとする動きが鈍くなり、ついには慢性の便秘になってしまいかねません。
ひどい人では一度に薬を何十錠も飲むという方もいました。

患者さんは本当に悩んでいるのに、薬に頼ってばかりでは、根本的な便秘の解消になりませんよね。
特に女性は、どの年代でも男性に比べて便秘に悩んでいる人が多いことがわかっています。
原因は恥ずかしくてトイレに行けなかったり、ガードルでおなかを締め付けてしまったり、また月経や加齢などのホルモンバランスの変化、極端なダイエットなど、実にさまざま。

男性に比べて便秘になりやすい状況が揃っているのですから、女性は日頃からお通じに気を配る必要があるのです。

どんな便秘も、解消の鍵は食物繊維が握っていた!

お通じがないと、体には肌荒れやイライラ、血圧上昇や膨満感などのつらい症状が現れます。
もはやおなかの不調だけではすまないのが便秘ですが、これはいくつかのタイプに分けられます。
まずはご自分がどのタイプに近いかを知ることで、便秘対策を考えてみましょう。

便秘は大きく分けて「器質的便秘」と「機能的便秘」の二つがあります。
始めに器質的便秘ですが、これは例えば、大腸の疾患や切れ痔やいぼ痔など、なんらかの体の異常によって腸の通りが悪くなって起こるものです。

そしてもう一つの機能的便秘は、いわゆる習慣になっている慢性の便秘のこと。
これはさらに「直腸性(習慣性)便秘」「けいれん性便秘」「弛緩性(結腸性)便秘」の三つに分けることができます。
まず「直腸性便秘」は、忙しいなどの理由で排便を我慢し続けていたら、いつのまにか便秘になっていたというもの。
当然、便意をもよおしたら我慢せずトイレに行くことが先決です。

続いて「けいれん性便秘」。

これは最近特に若い女性に多く、便秘と下痢を繰り返すため、「過敏性腸症候群」とも呼ばれています。

原因にはストレスやアルコールの摂りすぎが考えられます。

ですから、ゆとりある生活を送ると同時に、飲み過ぎにも注意しなければなりません。
そして中高年の女性に多い「弛緩性便秘」は、運動不足などで腹筋が弱まり、腸の便を出そうとする蠕動運動が弱まっていることが考えられます。
適度な運動や、朝目覚めたらコップ1杯の水を飲むなどして刺激を与え、腸の働きを活発にしましょう。

さて主な種類とその対応をみてきましたが、どのタイプにも共通して忘れてはならない重要なポイントがあります。
それが昔からお通じに役立てられてきた食維繊維をしっかり摂ること。
そもそも便秘というのは、十分に食物繊維が摂れていないことが大きく関係しているからです。

しっかり出すにはたっぷりの食物繊維が欠かせません

では、便秘解消を大いに助けてくれる食物繊維とはどのようなものかについてご説明しましょう。
食物繊維は、穀類や芋、豆、野菜、海藻、きのこなどに多く含まれ、不溶食物繊維と水溶性食物繊維の二種類に大きく分けられます。

まず不溶性食物繊維は野菜や豆類に多く含まれているセルロース、穀類に多いリグニンなどがあります。
不溶性食物繊維には便の体積を増やして、腸壁を刺激することで腸の蠕動運動を盛んにする働きがあります。
一方、水溶性食物繊維は水になじみやすく、ドロドロとした粘り気のある性質を持っています。

便は不溶性食物繊だけだと固いままですが、この水溶性食物繊維を摂ることで便に水分が加わって容積が増し、お通じをよりスムーズにします。
また体の中の有害な環境汚染物などを吸着し、便として排泄する働きも期待されているのです。

水溶性食物繊の種類には、りんごなどに含まれるペチンや、最近注目が高まっている、とうもろこしなどのでんぷんを分解した難化性デキストリンなどがあります。
このようにそれぞれに働きがある食物繊維ですが、摂取量が多いほど便の量が増します。

ちなみに理想的な便の量は一日150〜200g。
バナナに例えると約二本分ぐらいです。
これだけ出そうと思えば、一日に20〜25gは食物繊維を摂りたいもの。

しかし、現代人の平均摂取量は約14グラムと全く足りておらず、意識していてもなかなか理想的な量に届かないのが現状です。
最近では、手軽に豊富な食物繊維が摂れる健康補助食品もありますから、毎日の食事と上手に組み合わせるとよいでしょう。

大人だけの症状と思われがちな便秘ですが、実は、近頃子どもの間でも問題になっています。
そしてお子さんが便秘の場合、同じ食生活を送る親も便秘に陥っているケースが多いのです。
幼い頃から便秘の苦しみを経験させないためにも、お母さんが食物繊維の多い食事の管理を、きちんと心がけましょう。

便秘が恐ろしい病を引き起こす可能性も。

もともと野菜や穀類など低カロリーな食事が中心だった日本人は、栄養をしっかり吸収する必要があるため、肉食が多い欧米人に比べておへその左下あたりの「S状結腸」が長いといわれています。
野菜の煮物のような、いわゆる「おふくろの味」と呼ばれるような食事を摂っていた頃は、たっぷリ食物繊維を補っていたため、腸が長いことがとりわけお通じの妨げにはなりませんでした。

しかし戦後、腸は長いままなのに食物繊維摂取量は減り、その一方で肉中心の食生活に傾いてきました。
その結果、日本人の便秘人口が増加の一途をたどることになったのです。
ではなぜ、今、便秘解消の必要性が叫ばれているのでしょうか。

それは便秘と恐ろしい「大腸ガン」との関係が注目されているからです。

長年の研究の結果、大腸ガンは便がたまりやすいS状結腸付近にできやすいということがわかっています。
肉などに多い脂肪は、胆嚢から分泌される胆汁酸によって消化吸収されます。
この時使われた胆汁酸の多くは小腸から吸収されて肝臓に戻りますが、一部は大腸の腸内細菌によって二次胆汁酸になります。
これが体にとって有害な物質にあたると考えられています。

また腸内で吸収されなかったたんぱく質から生じる二級アミンと、腸内細菌によってできる亜硝酸が結合してできる「ニトロソアミン」も有害と考えられています。
この普段の食べ物から生じた毒素も、スムーズな排泄があれば大して問題にはなりません。

しかし慢性の便秘で便が長時間とどまっていると、それだけ腸壁を刺激し続けることになり、最終的に悪い症状につながる可能性があるのです。
だからこそスムーズな便通を習慣づけ、有害な毒素を出入しやすくしておく必要があるのです。

腸の健康は、体全体の健康に関わっています。
ですから、その働きを守るためにも、普段から食物繊維たっぷりの食事と適度な運動を心がけたいものです。
また、便秘だからとくよくよ悩まないことも大切。

そのストレスが、便秘を助長してしまうからです。
便秘の方もそうでない方も、この機会におなかの健康についてもう一度見直し、いつまでも元気な毎日を送りましょう。