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雑誌インタビュー・執筆情報
眼下と経営 2005 AUG vol.16

必ず目を通してもらえるお知らせ

 

患者さんをただお待たせするのではなく

 筆者が院内掲示に関して気を配るようになったのは、開業当初の待合室での患者さんたちの様子を見たのがきっかけでした。
当院は消化器・肛門疾患か専門のベッド数10床の診療所で、1日平均150人程度の患者さんが来院します。

 この領域は検査や、日帰りを含めた手術も多く、院長である筆者は診察室にこもりっきりというわけにはいかず、常に院内を行き来しています。
その姿は当然患者さんも見ます。
原則的に医師1人ですから、検査室にいっている問は「自分の番はまだなんだな」ということが患者さんにもわかってしまい、それが終わるまではお待ちいただくことになるわけです。

 この時間を無為に過ごすのではなく、すこしでも自分の体、病気に注意を向けるよう使っていただけないか、それがそもそもの出発だったのです。
病気や健康のことに理解を深めてもらうにはどんな情報が必要か、なかば手探り状態で、待合室の掲示からはじめました。
筆者は医院の理想として「納得のいく診療」「わかりやすい医療」をあげていますが、その前提には患者さんの積極的な健康維持行動が不可欠です。
そうした患者打動を支える意味でも役に立つのではと思ってはじめたのです。

患者さんの反応を確認するためには

はじめは掲示物だらけ

 まず、とにかく白分の病気のことを知ってもらおうと、掲示物の内容は当院の患者さんに多い疾患に関連するものからはじめました。
当初は、とにかく数多くの情報を提供しようと壁・面に貼り付けたこともありました。
しかしただ掲示すればよいということではなかったようです。

相談会は意見・感想を聞くチャンス

 当院は開業して10年になりますが、当初より2週に1度「健康相談」という患者さん向けの相談会を開催しており、毎回30名近くの方が参加しています。
診察の過程で聞き逃したこと、不安を抱えている病気のことなどを、ゆっくりと時間をかけて話し合う場ですが、ここで掲示物についての感想を聞くことにしました。
すると「とても参考になった」という意見があるとともに、「もうすこし整理して」とか「年寄りには文字が小さい」など、生の声に接することができます。
さらに掲示物に関するアンケートを実施したり、感想を聞かせていただくための投書箱を設置したりしています。

 こちらが思っているのとは違った反応が返ってくることも多いので、それを参考に、レイアウトを工夫して重要な情報は目につきやすい場所におく、あるいはイラストを多用するなどの改善に努めます。
一方的に掲示するのではなく、それを通じた対話がたいせつだと思っています。
掲示だけでなく持ちかえれるプリントにしたり、入院患者がくつろぐ談話室ではより詳しい専門的な情報を得られるよう書籍架を置くことにしたのも、メリハリを意識した工夫です。

ありがちな失敗

 貼りっぱなしや置きっぱなしでは、褐示物も冊子も医療機関側の“自己満足”に終わってしまいます。
「必ず目を通してもらえる」ようにするには、診療の場で繰り返し話題にし患者さんに意識してもらう「わかりやすかったか」「見にくくはなかったか」を常に聞き、意見を返してもらうことが重要だと思っています。
内容だけでなく、患者さんが読みやすい形やレイアウトも必要だというのがよくわかります。

長続きの秘訣は

 こうした活動の重要性については、多くの医師がよく認識しているといわれます。
しかしそれでも、「現実的にはなかなかうまくいかない」「はじめてはみたが長続きしない」といった声も多く聞かれるようです。
よくたずねられることですが、継続していくための最大のポイントはつくる側のモチベーションの維持にあるだろうと思っています。

 当院では、新たな掲示物を作成する際にはスタッフによる検訂会を開催します。
これには看護婦、栄養に事務職を含めた全職員が必ず参加し、何を伝えることが重要か、伝え方はこれでよいか、細目に関してまで徹底的に話し合います。
実際に原稿をつくるのは筆者が担当しますが、こうすることによって、掲示内容に関して全スタッフの意思統一が図れるのです。

 掲示物について患者さんから問い合わせを受けた際、誰でも的確に対応することができる。
「事務職だから」とか「栄養士でないから」といって答えられないようでは、当院ではスタッフ失格です。
医師・看護師・栄養士・事務職の“四位一体”で医療にあたる、これがわれわれの基本的なスタンスですが、院内掲示物は職員教育のための重要なツールにもなっているわけです。

 自分たちが作成に参加しているので、職員も患者さんの反応が気になるようです。
広報などの専任者をおけない小規模な施設の弱みを、全員参加で強みにかえています。
一度掲示したものは、きちんとラミネートフイルムにくるんで保存しておきます。

 内容によっては再度活用できるものもありますし、そうでないものもある。
ピロリ菌の消化性潰瘍への関与などが身近な例ですが、医学的な知見は常に新しくなっていきます。
古い掲示物をみて、使えるか使えないかを瞬時に判断できること自体、日々の勉強の表れといえるのではないでしょうか。

10年続けて思うこと

 掲示物、印刷物のほとんどは当院オリジナルのものです。
既製のものを使用する場合も事前に話し合って決めています。
さらに褐示物とは別に、院内報「まごころ医院新聞」(年2回程度、約6,000部)も発行していますが、これらを含めた制作経費は、それなりの額になっています。

 しかし収益を医療に再投資するということは、最新の内視鏡や超音波機器を入れることも含め、医療法人本来の理念にかなうことですし、必要なことであると考えています。
胃がんの自覚症状に関する掲示物を貼り出したときのことです。
診察時に「あれと似たような症状があるんですが」と訴える患者さんがいて、検査をしてみたらはたしてがんが見つかりました。
そういうことが一度ならずあったのです。

 患者さん白身に病気や体のことの理解を深めてもらう、そのうえで医師との共同作業として治療に取り組む、掲示物はそれを実践するための武器になると思います。