福島県会津若松市藤原一丁目5番地−32
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あるナースからの一冊の手帳 患者さんとの約束
 
それは、ちょうど私が医師となり3年目の、千葉にある某大学附属病院勤務時代にさかのぼること12年前の出来事である。
とある日曜日の夜、宿直室の電話が鳴った。夜の9時、また緊急の手術かと頭をかすめ、緊張の面持ちで受話器をとった。
その向こうから、あるナースの怒りで震える声が私の耳を直撃した。

「先生、担当の患者さんのご家族とご本人が、今日の夕方6時から先生の今度の手術のお話があるということで3時間もお待ちですが、わかられていますよね?」

 その当時、私は駆出しの外科医で、研修医の3年目であった。
毎日超多忙を極め、早朝より深夜まで激務であった。

 電話を受けた時は、石で頭をなぐられたような衝撃であった。
それは今まで一度たりとも、どんなに疲れていようとも患者さんとの約束を忘れたことはなかったからである。
そろそろ限界が来ていたのだろう。
しかも、待たせていた患者さんは40歳代の働き盛りの、胃癌と告知を受けた男性とその奥さん、そして小さな二人の娘さんたちであった。
疲れ果てた顔をした家族が4人、丸イスに座っていた。

「本当に申し訳ありません。」深々と頭を下げて謝った。
すると、どうだろう、患者さんは私に向かってこう言った。

「毎日、一生懸命やっている先生だからこそですよね。待っている時間なんて、全然気になりませんでしたよ。
日曜日というのに今日も朝から忙しかったんですね。」

朝から私の行動を病棟から見ていたのである。
医師となり3年、患者さんからこのような心温まる言葉をかけてもらったことは初めてだった。

 患者さんとの話が終わり、先はどの電話をしてきたナースが私の所に来て、

「今日はお疲れさまでした。今度はしっかりして下さいよ。
実は私も以前に先生のような失敗をしたことがあるんです。」と話が続いた。
すると、1冊の手帳をポケットより取り出し、「これ、先生」と見せてくれた。
その中には、びっしりと患者さん一人一人のこと、検査のこと、約束ごと等無駄なく記載されていた。

「先生、これと同じ手帳がもう1冊ありますから明日もってきます。」

 もっとも、そのナースが僕に教えてくれたことは、そして言いたかったことはきっとこういうことだったのだろう。

「先生がお忙しいのは私達ナースも十分知っております。だからといって、大切な患者さんとの約束ごとを忘れてはいけません。
なぜなら先生にとって患者さんはたくさんいらっしゃいますが、その患者さんにとって先生は、この世でたった一人の主治医なのですから」と。

 元旦の朝、真新しい手帳を手にすると当時のことを思い出し、初心に返り、新鮮な気持ちになり心が引き締まる。
今年はどんな患者さんと出会い、どんな約束ができるか楽しみでもある。
1冊の手帳は、私の医師としての心の歴史でもあり、これからも大切にしていきたい。
開業してからも忘れることなく、今年で80冊目となる。